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今月のこの一冊 ことばの学校 厳選の230冊から1冊を紹介します!
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『わくわく森のむーかみ』
村上しいこ/作 宮地彩/絵
1,512円 2011年初版 -
純真さ・誠実さ
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ほんわか・あたたかい
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ユーモラス・あたたかい
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郵便局で働くお父さんを手伝う心やさしいくまの子「むーかみ」が泥棒をしているきつねのぷっぷをいつのまにかに改心させて一緒に人助けをするお話です。
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まっすぐな気持ちを持つくまの子「むーかみ」は、すさんだ気持ちの持ち主の大人たちである泥棒ぎつねや孤独なかわうそのおばあさんの心を開かせます。「大人も本当は自分の気持ちをまっすぐ持てばいいんだよ。素直になればいいんだよ」と言われている気がしました。私も日頃から子どもたちからチカラをもらっていることを実感していますので、納得の一冊でした!
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『みずたまり』
森山京/作 松成真理子/絵
1080 円 2011年初版 -
思いやり
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じんとくる
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やわらかい
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タクが水たまりをのぞくと自分の顔がだんだんと津波でひとりぼっちになった女の子の顔に見えてくるのでした。
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「つなみにおどろいたタクでしたが、ひがたつうちにそのおそろしさも、おんなのこのことも、わすれてしまっていました。」
この一行が読み手をおのずと自分に引きよせて、このお話の世界に入りこませます。
この本の中心でもあると思うのですが、記憶が人を成長させるものになるというテーマがやわらかな絵とともにじんわりと伝わってきます。
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『きつねのかみさま』
あまんきみこ/作 酒井駒子/絵
ポプラ社 1188円 2005年初版 -
思いやり
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ほんわかする
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繊細、重厚
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姉と弟の二人はなわとびのひもを忘れてしまい公園に取りに戻ります。
するときつねの子供たちがなわとびで遊んでいました… -
共に人気、実力ある作者と画家の合作です。
ですから、気負いがなく、いつの間にかすっと、きつねと人が話し、いっしょに遊ぶ世界へ誘い込まれます。
ファンタジー性よりも登場人物の感情に寄りそうことを大事にしているようです。
映画「思い出のマーニー」もそういう印象ありました。
現代的な繊細さです。
最後に読み手への贈り物のような一言が待っているのもいつまでも心に残ります。
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『かいぞくポケット1
なぞのたから島』寺村輝夫/作 永井郁子/絵
1080円 1989年初版 -
冒険
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わくわくする
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親しみやすい
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仲間たちと胸おどるできごとを通して宝さがしの大冒険がくりひろげられます。
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ストーリーもさることながら、特徴的な書かれ方として、読み手に投げかけがあることです。
最初のページから「ポケット ケポット トッポケト うまくいえたら、よみはじめてよろしい」と始まります。子供たちの中には声高らかに言ってから読み始める子もいます。お話の途中でも、「じゅもんを三かいとなえること。うまくいえた人だけが、つづきをよんでよろしい。」と出てきて子供は「これ読むの?」と質問されることがよくあります。
このような「二人称小説」の手法は、知らず知らずのうちにものがたりに読み手をひきこみます。
こんなところもこの作品の魅力の1つなんですね!
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『みんなのきもち』
村上しいこ/作 西村繁男/絵
1296円 2006年初版 -
他人の気持ちを理解しよう
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ほんわかする
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ちょっとぶさいく
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はちろう君は、自分以外の気持ちになるという学校での友達の発表が不満です。それがしゃぼん玉の気持ちだったからです。「うそやん。うそつきや。」と言います。
しかし、家族といっしょにやってみると、信号機や鉄棒やゴミ箱、果てはおでんの気持ちになってみることができるようになるのでした。 -
関西弁のセリフまわしと、おでんがしゃべり出すという少しずれたような観点と間が抜けたような絵のタッチ。しかし、しっかりと他人の気持ちを理解しようとするステップを踏んでいる巧妙さ。つかみどころがないようで、最後にしっかり何かをつかんでいる読後感になります。
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『おおもりこもりてんこもり』
藤真知子/作 とよたかずひこ/絵
ポプラ社 900円 2008年初版 -
ファンタジー 環境問題
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ほんわかする
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ほのぼの・かわいい
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そばやのやへいさんが注文を受けるのは森の動物や妖怪たちです。
彼らとの心の交流が描かれます。 -
もりそばとモリのソバ(森の側)をかけるダジャレのとぼけた雰囲気の中、森の住人たちの世界に迷いこんでしまうという奇想天外な作風は『まじょ子』『わたしのママは魔女』シリーズで有名な作者の真骨頂です。
ユーモアな作風の中に自然破壊がさらりと風刺的に描かれているところなど和製『不思議の国のアリス』のように思いました。
ユーモアはストレートに意味を投げかけない分、実はあたまを使うので洞察力や感性が生まれる瞬間でもあります。
読み終わったら、どうぞもりそばをお子さんとご一緒に召し上がってください。
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『おしいれのぼうけん』
古田足日/作 田畑精一/絵
童心社 1300円 1974年初版 -
冒険(成長)
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ハラハラ・ほっとする
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えんぴつ画・素朴・モノクロ
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保育園で叱られて真っ暗闇の押入れに入れられてしまった二人。
そこで恐ろしいねずみばあさんが現れて大冒険の世界が繰り広げられます。 -
子どもたちがことばの学校で読み終わっても、しばらくたってまた読みたいと本棚から持って来る本があります。
何度もそういうリクエストを受けたのがこの本です。
大人目線では第一印象えんぴつで画で、モノクロであまりピンと来ない感じがあるのですが、どうやらストーリーにインパクトがあるようです。保育園の押入れという日常から暗闇の中に広がる無限のファンタジー世界。
大人が読む小説でも名作とは、
共感(シンパシー)と驚き(ワンダー)の要素がバランス良く組み合わさっていることだと言われます。そして、名作とは再読をうながすものだとも言われます。
もう一度読みたいと子どもたちが魅力を感じるこの作品はやはり名作として読み継がれています。ことばの学校で『おしいれのぼうけん』をぜひ読んでみてください。