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- 2015年の今月のこの一冊
今月のこの一冊 ことばの学校 厳選の230冊から1冊を紹介します!
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『天使のいる教室』
宮川ひろ/作 ましませつこ/絵
605円 1996年初版 -
いのち、生きる力
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なみだが出る
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あたたかい
- 小児がんを患うあきこちゃんが、小学生になった1年間の物語。あきこちゃんが家族や先生、クラスのみんなの支えの中で、病気にめげず生きる姿が、入学式、遠足、運動会、折々の行事を通して描かれます。
- あきこちゃんをめぐる人々を通して、人が共に心を分かち合いながら生きるとはどういうことかを描いた作品です。中でも担任のサトパン先生が「ことばあそびうた」として授業で取り上げる「かっぱかっぱらった…」で有名な谷川俊太郎の「かっぱ」の詩などが出てきます。あきこちゃんに生きる力を与えるクラスみんなのことばのシャワーとなってふりそそぎます。
最後まであきこちゃんことばの力を信じています。入院したベッドの中でクラスのみんな23人分のクリスマスカードを書きます。一人ずつにそれぞれのことばをつづるのでした。ことばのシャワーは読み手にも生きる力を分けてくれます。
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『ふしぎなふしぎなながぐつ』
佐藤さとる/作 村上つとむ/絵
1,512円 1972年初版 -
想像・空想
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不思議な気持ち
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素朴
- かおるくんは真新しい小さなながぐつが片方かきねの下に落っこちているのに気づきます。次の日、行ってみるとそのながぐつは一回り大きくなっているようすです。持って帰って置いておくと日に日に大きくなるのでした。かおるくんはこのおかしなながぐつを人に見られないように物置きにかくします。そのうちに、ながぐつはかおるくんの背たけよりも大きくなります。ところが今度は日に日に小さくなっていくのです。
- くつしたの中にプレゼントを入れてくれるのはサンタクロースとわかっているからプレゼントは喜べるものなんですね。誰のものかわからないものを手に入れたことがきっかけとなり、想像がふくらむお話です。このお話のながぐつは結局なんで大きくなって、その後小さくなってしまったかもわからないままなのです。読後感はいつまでも不思議の世界と自分のいる日常がつながっているような妙な気分です。落し物を見ると不思議な空想がわいてきてしまうのです。
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『虫めづる姫ぎみ』
森山京/作 村上豊/絵
1,296円 2003年初版 -
個性・アイデンティティ
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みんなちがってみんないい
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やわらかい、丸っこい
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お姫さまは毛虫が大好きで、男の子たちに虫をつかまえさせては、
虫の名前を調べたりするのが楽しみです。美しいお姫さまなので男性からも言い寄られたりもするのですが、それでもお姫さまは虫のことにしか興味がないようすです。 -
『堤中納言物語』という平安時代に書かれた作品の一編です。お姫さまは周りがどう言おうがお構いなく、趣味に没頭して生きる動じなさがあります。そこに人間的な個性と魅力が表れていると感じる作品です。この作品は虫をあやつるお姫さまが活躍する『風の谷のナウシカ』のもとにもなっているそうです。
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『ガラスのうま』
征矢清/作 林明子/絵
1296円 2001年初版 -
想像力、純粋さ
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ドキドキ、わくわく
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シンプル、繊細、つるっとしている
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すぐり少年はガラス細工のうまの足を折ってしまいます。うまはすぐりの手から抜け出して、山の中にかけ出して行ってしまいます。追いかけて迷い込んだ山の中で、すぐりは魔女のようなガラス山のかあさんの小屋で水くみをさせられます。たまった水がめの奥は深く夜空のような世界が広がりました。その中をあのガラスのうまが走っているのです。追いかけるように、すぐりは水がめの中に飛びこむと、その先には何もかもガラスでできた世界が広がっているのでした。
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日常から不思議な世界に入り込んでいく「千と千尋の神隠し」や「おしいれのぼうけん」のタイプのお話です。子供がお話の世界に入り込みやすく、魅了されるタイプのストーリーだといえます。
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『ぼくはおばけのおにいちゃん』
あまんきみこ/作 武田美穂/絵
教育画劇 1080円 2005年初版 -
友だち
兄妹 -
わくわくする
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輪かく線が太く、はっきりしてわかりやすい
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留守番する幼い兄妹が夜になる心細さを感じています。
唐突におばけが窓からやって来て二人と一緒に夜空をかけめぐります。 -
先日、「5回読んだよ!」と1年生に言われたた本をご紹介します。
大人の目線からすると、おばけとの交流というありがちな設定の本の印象です。
それなのに、子どもが再読したくなる魅力とは何かと考えてみたくなりました。
まず、大人には単純に感じるストーリーですが、それは絵を見る余裕を持たせる意図があるようです。
星空の絵が見開きいっぱいに広がったり、おばけが紙面を縦横無尽に飛び回る様子が躍動感を感じさせます。
また、ことばに着目すると「ひゅうひゅうひゅう。」「おーい、おーい、おーい」など繰り返しが多用されます。こう考えてみると、単純明快なストーリー、繰り返しという人を読書の世界に引き込む要素の王道がありました。
1年生に学んだ1冊です。
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『ちいさなねこ』
石井桃子/作 横内襄/絵
1967年初版 864円 -
猫の視点
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はらはらしたけれど、ほっとした。
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リアルな描写とシンプルな色使い
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ちいさなねこが母猫の目を盗んで外に出て行ってしまい、車や犬など危険をかいくぐっていきます。
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本の本質、同じ世界を見ているはずなのに別の視点で見てみると
こんなに違って見えるのかということの醍醐味がシンプルに描かれています。
猫が本の見開きに大写しで描かれて、ならではのすばしっこい動きを紙面上で
あらわすスリリングな感じもおもしろいです。
安心感とともに読み終わるので、本を閉じるときには満足感でいっぱいです。
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『とおせんぼ』
村上しいこ/作 たごもりのりこ/絵
1,620円円 2014年初版 -
人情
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めでたしめでたし
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ほのぼの
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一人ぼっちの子鬼は友達が欲しくてとおせんぼをする毎日です。けれど、誰も立ち止まってくれません。ある時通りかかったおじいさんにとおせんぼをすると「へたくそ!とおせんぼの極意を教えてやる」とおじいさんのだんご屋に連れていかれて働くことになりました。
だんご作りをするだけの毎日が過ぎていきます。
けれど、おじいさんはちゃんとその間に山の中にだんご屋を一軒建っててくれていたのでした。のれん分けしただんご屋は繁盛してとおせんぼをしなくても人が集まる場所になったというお話です。
心憎い大人のはからいです。 -
ことばの学校ではこのたび、小学校入学前からでも取り組める教材を開発しました。ラインナップはすべて絵本です。今回取り上げた本はその1冊です。
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『すすめ!ドクきのこ団』
村上しいこ/作 中川洋典/絵
1,296円 2011年初版 -
自己変革
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ハッとする
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線が太い
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小4のたつしが名づけたドクきのこ団といういたずらグループが今解散の危機にあります。そんな中、たつしはクラスメイトの愛里ちゃんを好きになるのですが、仲良くできず、愛里ちゃんにいたずらばかりしてしまうのです。相談したお兄ちゃんからは相手のことを見ていないからだと指摘されるのでした。そのことがきっかけで、たつしはドクきのこ団の解散危機の原因がひとりよがりな自分にあるのだと気づくのでした。
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兄ちゃんのアルバイト先の食堂でお客さんの気持ちを察しながら、対応することを覚えたたつしは愛里ちゃんやドクきのこ団の仲間たちの気持ちを考え始めます…
要所要所でカツ丼やラーメンつくっていっしょに食べるという話が出てきます。人と人が心を通わせる機会をいっしょに食事することとして描いています。そこが気負いがなくさらりとした様子で余計にあったかくて、しみじみとしてきます。
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『おばあさんのひこうき』
佐藤さとる/作 村上勉/絵
1973年初版 1,620円 -
家族
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わくわくする
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素朴
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編み物上手な一人暮らしのおばあさんがチョウの羽をじっくり観察して、その模様通りに編み物を作ったら、なんとふわりふわりと編み物が浮き出しました。
おばあさんは、これで飛行機を作り、孫のいる港町へ空の旅をするのでした。 -
お話の始まりがじわりじわりとしたテンポで、いかにも編み物を楽しむおばあさんのゆったりとした時間感覚です。
そのテンポの中で、不思議な出来事が突如として起こります。
そのため、お話の変化の面白さを一層感じさせます。
旅が終わり、
おばあさんは大好きな編み物をあまりしなくなってしまいます。
そして、それまで孫家族と同居することを断っていましたが、孫のいる町へ移り住むのです。
しかし、その理由は特に書かれません。
そんな終わり方も、ずっと不思議な世界の余韻を読み手に残してくれます。
なぜなんだろうと想像してみましょう!
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『三銃士』
デュマ/作 村井香葉/絵
864円 1844年初版 -
仲間
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はらはらする
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劇画風、強い
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青年ダルタニャンがパリに出て、銃士隊の仲間たちと一緒に敵対するリシュリュー首相らの陰謀に立ち向かう冒険あり、恋ありの物語。
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本来は1000ページ以上ある本をダルタニャンの エピソードを中心に小学生向けにまとめたのがこの本です。そのためとてもスピード感にあふれています。 フランスとイギリスの戦争が背景にあり、 ダルタニャンを始め、実在した人物がたくさん出てきます。
三銃士というと男の子の本のように思いがちですが、 中心人物にはダルタニャンの恋人コンスタンス、 そしてフランスの王妃、他になぞの黒マントの女ミレディなどの女性もたくさん出てきます。
時代を経ても老若男女誰でも、みんな面白い名作をどうぞ!
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『ふりかけの神さま』
令丈ヒロ子/作
わたなべあや/絵
1,188円(税込)
2006年初版 -
夢
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夢を見た気分
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ほのぼの 丸みがある
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主人公のさらちゃんはおかずを食べず、ふりかけのごはんが大好き。お母さんにふりかけを禁止されてしまったところ、ふりかけの神様が現れます。
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「○○の神様」という言い回しは良く使われますね。
八百万(やおよろず)に神様がいると言いますが、さすがにいないだろうと思う ふりかけにも神様がいたのでした。
主人公のさらちゃんがふりかけよりも大事なものに気付いたとき神様はいなくなってしまいます。
その大事なものとはお母さんの存在だったのです。 お母さんがさらちゃんを思って作ってくれた食事が一番だと気付く。
主人公が他の登場人物の影響で変化・成長するお話をシンプルにそしてファンタジーの力を使って読ませてくれます。
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『赤毛のアン』
L.M.モンゴメリ/作
村岡花子/訳 HACCAN/絵
713円 1908年初版 -
成長
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わくわく
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現代的・かわいらしい
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孤児のアンが引き取り育ててくれたマシュウおじさん、マリラおばさんや友人たちとの交流を通して自分を見つめ、生きる喜びを様々に感じる瞬間が描かれます。
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連続テレビドラマでも話題になりました。
読み始めると風変りな少女のアンが出てきます。
最初、人の話も聞かないような困った印象なのです。
ところが、読み進めるとその違和感が読み手を引き込む力に変わるのです。
アンが生き生きと語りかけてくるようなのです!
そして、アンを引き取ったマリラやマシュウがそうなったように
アンの想像力あふれる話をまた聞きたくなってしまいます。
たぐいまれな想像力と純粋な(まっすぐな、そのため失敗もする!)
性格のアン・シャーリーの成長がプリンスエドワード島の美しい四季とともに絵のように語られます。