- ホーム
- 今月のこの一冊
ことばの学校とっておきのラインナップの1冊を紹介します!
-
『うきわねこ』
蜂飼耳/作 牧野千穂/絵
1,512円 2011年初版 ブロンズ新社 -
秘密のできごと
-
宙に浮いたような心地
-
柔らかいのに厚みがある
-
おじいちゃんからえびおにお誕生日プレゼントが届きました。浮き輪の贈り物でした。「満月の夜までしまって置くように」という手紙がいっしょに入っていました。満月の夜にえびおが浮き輪をつけてみると・・・・・・
-
えびおが浮き輪をつけるとなんと空に浮かび上がることができたのです。空の上では同じく浮き輪をつけたおじいちゃんが待っていました。そして、おじいちゃんと秘密の夜のおでかけをすることになります。秘密にしておくようにおじいちゃんに言われたえびお。2人だけの秘密の共有。それは少し大人になることなのでしょうか。
-
行事の由来えほん
『たなばたものがたり』舟越克彦/作 二俣英五郎/絵
1,296円 2001年初版 教育画劇 -
夫婦愛、星座
-
ロマンチック
-
水彩画の淡い色と線
-
おりひめとひこぼしが年に1度、7月7日にだけ会う「たなばた」の由来。
-
おとなになると細かな部分はすっかり忘れてしまっていて、あらためて読み直してみると新鮮な発見があって面白いのが昔話です。今回わたしが一番はっとしたのはおりひめとひこぼしが再会する場面でした。二人が天の川を渡る時にカササギの群れがやって来て、橋になってくれたのでした。この絵本では見開きページを使い、淡い色合いの背景にカササギの群れがアーチを描いて飛んでいて牧歌的な雰囲気でした。橋はカササギだったということをすっかり忘れていました。昔の中国ではベガ(おりひめ)とアルタイル(ひこぼし)の間にある白鳥座がカササギに見えたようです。最後のページに詳しく由来が書かれたページもためになります。星座の話もからめながら、おとなと子どもがいっしょに読むことで話が深まりそうです。
-
行事の由来えほん
『くわずにょうぼう』谷真介/作 赤坂三好/絵
1,296円 2009年初版 -
行事のゆらい
-
ドキドキする
-
版画、線が太い
-
七べえさんのところに、およめさんが来てくれました。ご飯を食べないのに、よく働くおよめさんだと喜んでいました。ところが、たくさんあったはずのお米が減っているのです。不思議に思った七べえさんは、こっそりおよめさんが食事をしているところをのぞいたのでした。そこで見たのはなんと、やまんばがおにぎりを50個ほども作って、頭にもうひとつ大きく開いた口から食べていたのでした。およめさんはやまんばだったのです。
-
やまんばは正体がばれると、七べえさんを取らえて食べようとするのでした。この後「こどもの日」にしょうぶ湯につかるようになったできごとが起こるのですが、それは読んでのお楽しみです。
-
行事の由来えほん
『げんきにおよげ こいのぼり』今関信子/作 福田岩緒/絵
1,296円 2001年初版 -
行事に親しむ
-
気分爽快
-
ほんわかしている
-
お話は江戸時代にさかのぼり、最初にこいのぼりができたときのエピソードが紹介されます。心やさしい武士が町の子どもたちのために作ったのが始まりだそうです。
-
お話の冒頭、替え歌が出てきます。
「やねよりひくいこいのぼり ちいさいまごいはおとうさん いそがしそうにおよいでる」皮肉でありながら、現代の住環境や世相をうまく表現しているように感じました。ここを話の糸口にかつては悠々と空を泳いでいたこいのぼりのお話が語られるのです。
-
『坂本竜馬』
砂田弘/作 柳柊二/絵
670円 1985年初版 -
歴史の転換点
-
わくわくする
-
重厚
-
江戸時代末に新しい日本の国づくりに力をそそいだ坂本竜馬の伝記です。竜馬は西郷隆盛がいた薩摩藩(鹿児島県)と仲が悪かった長州藩(山口県)を仲直りさせたことで有名です。強い2つの藩が力を合わせることで新しい国づくりができました。
-
今年の大河ドラマは西郷隆盛。
坂本竜馬は、西郷隆盛といっしょになって日本の新しい国づくりがうまくいくように努力しました。坂本竜馬と西郷さんが、はじめて出会った場面はこんな感じです。
西郷をたずねた竜馬は、まずそのりっぱなからだつきに圧倒された。
1メートル80近い身長、体重は100キロをはるかにこえていると思われた。それに顔も大きく、ぎょろりとした目、太いまゆ、ひきしまったくちびるには薩摩藩のリーダーにふさわしい風格がただよっていた。歴史が大きく動き始める一場面ですね。
-
『おにたのぼうし』
あまんきみこ/作 いわさきちひろ/絵
1,080円 1969年初版 -
他者
-
せつない
-
あわい
-
節分の日、豆まきのお話。追い出されるはずのオニが、実は思いやりのあるオニだった。「おにた」は心やさしいオニの子。病気のお母さんの看病をする女の子のためにごちそうを持ってきます。女の子は「おにた」をオニだと知らずに豆まきがしたいと言うのでした。
-
この絵本は追い出されるオニ側の視点で描かれた作品です。女の子が「おにた」をオニと知らず、無邪気に豆まきがしたいという言葉は「おにた」にとっては一番つらい。自分が当然だと思っていることは本当にそうなのだろうか。いつまでたっても分かることのできない他者の心。その存在を短い話の中で示してくれています。
-
『宿題ひきうけ株式会社』
古田足日/作 長野ヒデ子/絵
1,296円 1966年初版 -
社会風刺
-
はっとする
-
太い筆致 めぢからがある
-
宿題を本人のかわりにやってくれる会社。「そんな会社があったらいいなあ」と会社を作ったのはサクラ小学校の5年生たちです。宿題ひきうけ会社の仕事は宿題をやる係と宿題をやってほしいというお客さんの注文を取って歩く係りに分かれています。どちらもなかなか大変な仕事なのでした。
あるとき、学校の学級会で会社の存在を先生に知られてしまいます。先生から会社は解散を命じられてしまうのでした。 -
お話の展開はその後、宿題を学校から与えられる仕事ととらえ、大人の社会の労働問題とつなげて語られていきます。競争原理で成り立つ「社会」とはいったい何なんだろうという大きなテーマに切り込んでいきます。
-
『ふしぎなたいこ』
石井桃子/作 清水崑/絵
691円 1953年初版 -
奇想天外
-
急転直下
-
さらりとした筆絵 ユーモラス
-
げんごろうさんはふしぎなたいこを持っています。
たいこの片方をたたいて「鼻高くなれ、鼻高くなれ」という言うとピノキオのように鼻がどんどん高くなります。
反対側をたたいて「低くなれ、低くなれ」と言うと高くなった鼻が低くなります。
人を喜ばせるために使うには良いのですが、げんごろうさんが自分だけのために使ったために事件が起こります。 -
調子にのって、たたいていたら、鼻が天国まで届いてしまうのです。
結末はある生き物にげんごうろうさんがなってしまうという話です。
いったい何だと思いますか。虫ではありません。